阪神間(神戸・西宮・尼崎・伊丹・宝塚など)で新築一戸建てを探していると、利便性の高いエリアゆえに「狭小地のビルトインガレージ付き物件(3階建など)」に出会う機会が多いかと思います。
最近では、建売住宅であっても「高断熱・高気密」「高性能住宅」を大々的にアピールする物件が増えてきました。
一見、トレンドを押さえた素晴らしい物件に見えますが……実は「建物の仕様書」を細かく紐解いていくと、「高性能という言葉の裏にある、コストダウンの矛盾」が隠されているケースが少なくありません。
今回は、過日に「注文住宅仕様の建売」と題した記事に対し、たくさんの方からご相談を頂きましたので、改めて「一見おしゃれで高性能っぽいけれど、住んだら高確率で後悔するかもしれない“ちぐはぐな仕様”」について、実例をもとに徹底解説します。
物件概要を見たときに、「1LDK+3S(納戸)」や「2LDK+2S」という表記を見たことはありませんか?
「部屋数がたくさんあって使いやすそう!」と思うのは禁物です。
建築基準法では、居室として認めるために「床面積に対して一定以上の採光(窓の大きさ)」が必要です。
つまり、3Sや2Sとなっている理由は、「主に採光基準が未達のため、法律上『部屋』と呼べない空間がそれだけ多い」ということです。
特にビルトイン車庫付きの狭小住宅の場合、1階や北側の部屋は光が入らないため、殆どが「納戸」扱いになります。
住んだ後の後悔
「日中でも真っ暗で、子供部屋にしたら子供が引きこもりがちになった」
「湿気がこもりやすく、クローゼット代わりにしか使えない」といった事態に陥りかねません。
ここが最大の矛盾ポイントです。
仕様書に「高断熱・高気密」と書かれているのに、窓を開けてみると「アルミサッシ」や「アルミ樹脂複合サッシ」、さらに「全体的に窓が小さく、幅の狭い押し出し窓や、高さの低い掃き出し窓ばかりで薄暗い」……。
これは明確なコストダウンのサインです。
住宅の熱の約50〜70%は「窓」から逃げ出します。
本当に高断熱・高気密を謳うのであれば、今や「樹脂サッシ+Low-Eペア(またはトリプル)ガラス」が世界の常識であり、日本の高性能住宅の最低ラインです。
ここにアルミが使われている時点で、結露のリスクは跳ね上がり、「冬は窓際が寒い家」になります。
それは、「安価なサッシで断熱性能(UA値)の計算数値を良く見せるため」です。
窓を小さくすれば、性能の低いアルミ樹脂サッシを使っても、全体の断熱計算上の数字は悪くなりません。
つまり、「計算上の数値をクリアするためだけに窓を小さくし、その結果、室内が法律上『居室』にできないほど薄暗くなっている」という本末転倒な設計なのです。
住んだ後の後悔
「高性能のはずなのに冬に窓が結露する」
「昼間なのに電気をつけないとリビングが暗い」
「窓が小さくて風が通り抜けない」
最近人気の「ダクトレス第1種換気システム(壁に直接ファンを埋め込むタイプ)」。
ダクトがないためメンテナンスが楽というメリットがありますが、ビルトインガレージ付きの狭小住宅に採用する場合は注意が必要です。
ダクトレスタイプは、各部屋(壁面)に直接換気ファンを取り付けます。
狭小住宅で部屋数が多く、さらに「1LDK+3S」のように細かく空間が区切られている場合、家中に何台ものファンを設置しなければなりません。
住んだ後の後悔
「寝室の枕元に換気ファンがあり、夜間にモーター音が気になって眠れない」
「外の道路の音がファンを通してダイレクトに聞こえる(阪神間の幹線道路沿いや線路近くは特に致命的)」
また、間取りが複雑な場合、ダクトレスでは家全体の空気が綺麗に循環せず、空気の「淀み」ができるエリア(特に1階の納戸など)が生まれやすくなります。
注意:納戸等に、これらの換気システムが設置されていない場合、①納戸内の湿気やカビの発生、②隣室から納戸へのニオイ漏れ、③家全体の換気風量バランスの崩れや冷暖房効率の低下といったデメリットが生じる可能性があります。
ドアにスリットやアンダーカットがあり、廊下や隣室と空気が行き来できているか最低限ご確認ください。
断熱材に「アクリア高性能グラスウール(厚み105mm)」を使用している点。
これ自体は悪い建材ではありません。
しかし、「施工力」と「ビルトインガレージ」の組み合わせにおいて、大きな落とし穴があります。
グラスウールは、隙間なく完璧にパンパンに詰め、かつ「防湿気密シート」を隙間なく施工しなければ、本来の断熱・気密性能(C値)は出ません。
壁の中に少しでも隙間があると、そこで内部結露を起こし、柱を腐らせます。
突貫工事になりがちな一般的な建売住宅の現場で、複雑な狭小住宅の構造に対して、そこまで丁寧な気密施工が担保されているでしょうか?
さらに、ビルトインガレージの真上の部屋(2階リビングなど)の床下に、ただ105mmのグラスウールを入れただけでは、冬場にガレージからの冷気がダイレクトに床に伝わり、「床暖房が効かないほど足元が冷える部屋」になってしまいます。
内装や構造の仕様を見ると、さらにちぐはぐさが際立ちます。
構造: コスト重視の「集成材」
天井: リビングだけ見栄えを良くした「天然木のあらわし梁」
壁: 量産型の「白色ビニールクロス」
床: 節(ふし)だらけで、抜け節を樹脂で丸く穴埋めした「安価な杉無垢フローリング」
「床は天然木の無垢杉フローリングです!」と言われると、なんとなく高級感があるように感じますよね。
しかし、「抜け節を樹脂で埋めた杉材」は、無垢材の中でも最もグレード(価格)が低い部類に入ります。
ビニールクロスで囲まれた量産型の空間に、節だらけで黒い樹脂の斑点がある床、そして天井にはポツンとリビングだけ集成材ではない「あらわし梁」……。
これは全体のデザインバランスを考えた結果ではなく、「『無垢材使用』『自然素材』というキャッチコピーをチラシに書きたいがために、部分的に安い素材を寄せ集めた」結果の仕様です。
住んだ後の後悔
「実際に家具を置いてみたら、床の節が目立ちすぎてごちゃごちゃして見える」
「杉は柔らかすぎるため、子供がおもちゃを落としただけで一瞬で凹み、傷だらけになった」
「無垢の床なのに、壁のビニールクロスのせいで調湿効果を体感できない」
外壁の候補として「焼き板風の塗装無垢材・ガルバリウム・サイディング」が挙げられている場合、
どれを選ぶかで10年後の出費が100万円単位で変わります。
狭小地が多い阪神エリアでは、隣の家との隙間(ドン突き)が狭く、足場を組むだけでも一苦労です。
もし「焼き板風の塗装無垢材」を選んだ場合、定期的な塗り替えメンテナンスを怠ると、雨風で一気に劣化します。
しかし、隣家との隙間が狭い狭小住宅では、「メンテナンスしたくても足場が組めない、または足場代が通常より遥かに高くつく」という問題が発生します。
今回ご紹介した仕様の組み合わせは、結論から言うと「あり得ます」。
ただしそれは、住む人の快適性を一番に考えた家ではなく、「建売業者が『高性能・自然素材』というトレンドワードを散りばめて高く売るために、コストを限界まで削ってパズルのように組合せた家」です。
「この窓の小ささで、日中のリビングは本当に照明なしで過ごせますか?」
「アルミ樹脂複合サッシとのことですが、冬場の結露保証はありますか?」
「ビルトインガレージの真上の部屋の床は、冬に冷え込みませんか? どんな断熱対策をしていますか?」
もし、これらの質問に対して、明確な根拠のある回答(気密測定のC値の実測値の提示など)が返ってこない場合は、一度冷静になって立ち止まることを強くお勧めします。
家は、スペックの数字だけで住むものではありません。
毎日の光の入り方、風の通り道、そして10年・20年後に家族が笑顔で暮らせるかどうかのバランスが大切です。
高い買い物だからこそ、厳格な使用ルールの無い「高性能」という魔法の言葉に惑わされず、本物の仕様を見極める目を持ちましょう。